ヒトラーは我々の友人ボリスに勝つことができなかった。今、ウラジーミル・プーチンが彼を殺しました。

2022年3月23日 (水) 23:002022年4月12日 (火) 15:17

ブッヘンヴァルト強制収容所で失われた命を祀るブッヘンヴァルト記念館での仕事は、月曜日の衝撃で始まった。午前中、私たちの友人でブッヘンヴァルトなど3つの強制収容所の生き残りであるボリス・ロマンチェンコが、ハリコフの彼の高層マンションにロシアのミサイルが命中して亡くなったというニュースをウクライナから受け取ったのだ。

ロマンシェンコは96歳だった。強制収容所では、仲間のロシア人捕虜とともにSSと戦っていた。1945年に解放されて以来、ナチスの恐怖の記憶を守るため、そして平和のために尽力してきた。ロシア語を母国語とするこの勇敢な男が、ロシアのウクライナ侵攻の犠牲となったことは、悲劇であり、残念なことである。

ロマンシェンコは1926年、ウクライナ・シュミ州のボンダリ村に生まれた。ドイツ軍のソ連侵攻から1年半後の1942年末、占領軍は彼の村の男性全員を、中には16歳の若さでドイツに強制労働者として送還した。当時16歳だったロマンシェンコは、他の村人たちとともにドルトムントに送られ、地下の炭鉱で働かされることになった。

彼は収容所から逃げ出そうとしましたが、ドルトムントの貨物駅で看守と警察に逮捕されました。その後、いくつかの刑務所を経て、1943年1月末にゲシュタポ（ドイツの秘密警察）にワイマール近郊のブッヘンヴァルト強制収容所に強制送還された。そこの採石場で重労働を強いられた。

1943年6月、SSは彼と200人近い捕虜をバルト海のウーゼドム島にあるペーネミュンデに移送した。1944年にロンドンやアントワープを爆撃したフォン・ブラウン開発のV2ロケットを組み立てるためである。1943年8月のペーネミュンデへのイギリス軍の空襲で強制収容所の囚人も犠牲になり、ロケットの組み立てはハルツ山地の地下トンネル施設、ミッテルバウ・ドーラ強制収容所に移される。

SSは、ロマンシェンコを含む囚人たちをペーネミュンデからハルツ山中に移動させ、そこで地下作業と生活をさせた。深さ50メートルのトンネルに4段の木製の簡易ベッドが置かれ、そこが宿泊施設となった。囚人たちはこの地下強制収容所を “ドーラの地獄 “と呼んだ。

SSは、ペーネミュンデからハルツ山中にロマンシェンコら捕虜を移動させ、そこで地下作業と生活をさせた。深さ50メートルの坑道に4段の木製の簡易ベッドが置かれ、そこが宿泊場所となった。囚人たちはこの地下強制収容所を “ドーラの地獄 “と呼んだ。

ロマンシェンコは、飢えと病気と虐待にまみれたこの地獄から生還した。1945年4月、ベルゲン・ベルゼン強制収容所への死の行進も生き延びた。1945年4月15日、イギリス軍は彼をそこで解放したが、まだ帰国は許されなかった。

スターリン主義のソ連では、この試練を乗り越えたソ連の強制収容所の囚人や捕虜は、ドイツに協力したのではないかと疑われ、敵の手に落ちた彼らの生存は疑わしいとされた。ロマンシェンコは、他の多くのソ連強制収容所の生き残りと同様、赤軍の占領軍兵士として東ドイツに派遣されることを余儀なくされた。そこで、自分がソ連国民であることを証明することが求められた。そして、1950年までウクライナ東部の故郷に帰ることは許されなかった。

ウクライナに戻ったロマンシェンコは、昼間はタイピストとして働き、夜は鉱山工学を勉強し、見事に学位を取得した。その後、農機具の設計も手がけた。ソ連崩壊後、ドイツ強制収容所での体験を公にするようになった。何度もドイツを訪れ、ブッヘンヴァルトやミッテルバウ・ドーラの記念館で行われた記念行事に参加した。ロマンシェンコ氏は、小学生を前に自らの体験を語り、平和と自由を守り、人権を守ることを訴えた。

2013年、ブッヘンヴァルト強制収容所の解放記念日に、記念館の点呼広場から「心から幸運を祈ります。私たち元収容者が経験したことを、誰も経験することがないように願っています」と語った。強制収容所と第二次世界大戦を生き抜いたロマンシェンコが、9年後にロシアの空爆で命を落とすことになろうとは、当時は誰も想像していなかっただろう。彼は、コロナウイルスの恐怖でアパートに閉じこもらなければならなかった最後の数ヶ月間、愛情を持って彼を看病した息子と孫娘に囲まれている。

ヒトラーは我々の友人ボリスに勝つことができなかった。今、別のファシスト独裁者、ウラジミール・プーチンが彼を殺した。しかし、プーチンは新しいヒトラーではない。ウクライナへの侵攻を命じ、自国民を残酷に弾圧することに躊躇しないモスクワの支配者に対する怒りはあるものの、ナチスのテロとプーチンやその属国が犯した犯罪の間に誤った歴史的類似性を引き出さないように注意しなければならない。

ホロコーストをはじめとするナチスの犯罪は、特定の歴史的文脈の中で行われた特異な出来事であり、これらの出来事を相対化することには注意が必要である。しかし、現在のロシア指導者の犯罪に対する憤りを表明するのに、ホロコーストとの比較は必要ない。また、プーチンの主張するウクライナの「非正規化」は、彼の攻撃的な帝国主義を正当化するために作られた大胆な嘘であり、19世紀の大ロシアの思想に根ざした嘘であることを明確に述べておく必要がある。

この嘘の不条理さは、第二次世界大戦でロシアの同志とともにナチスと戦った何千人ものウクライナ人の生存者が、今、ロシアの爆弾によって脅かされ、ボリス・ロマンチェンコの場合は殺害されていることからも明らかである。1945年、解放された収容所の点呼広場に立ち、平和と自由の世界を築こうと誓ったブッヘンワルトの生存者の遺産に対する悲劇であり裏切りである。